時代とともに働き方や価値観が多様化する中、コロナでは2024年より「服装選択自由化」を本格的に導入しました。
従来、営業部門などを除く多くの職種で義務付けられていた制服着用。その慣習を見直し、業務上必要な職場を除いて個人の選択に任せるというこの取り組みは、単なる業務効率化にとどまらず、多様性の尊重や役割固定の解消を目指したものです。
推進の中心となった総合企画部の塩原さん、長井さんに、導入の背景から現場での反応、そして今後の展望について伺いました。
塩原:もともと社内で、「働きやすさ」や「やりがい」の向上について検討しており、社員に従業員活躍についてのアンケートを取ってみたんです。その中で、職場によっては、女性がお茶出しや書類配布を担当するなど、暗黙の役割分担が残っていることが浮き彫りになりました。そうした役割固定への違和感や解消を望む声が多く寄せられたことが出発点です。
長井:役割固定の解消やジェンダー平等、ダイバーシティの観点から見たときに、女性が一律で事務服を着用しなければならない状況が役割意識の植え付けにつながっているのではないかと感じていました。もし、服装が役割を縛り付ける一因になっているのであれば、自由に選べるようにすればよいのでは、と考えました。
——服装選択自由化の提案から制度化までは、どのように進みましたか?
塩原:当時は「働きがい」向上に向けて様々な施策を検討していましたが、フレックスタイム制度など勤怠の制度も並行して検討しつつ、スピード感を重視し、できるところから手をつけることにしました。
役員との議論を深めるなかで、社員の「働きがいを上げる」、「活躍してもらう」ことは賛成でも、服装選択自由化とどう繋がるのかピンとこないという反応もありました。
長井:「服装選択自由化」については役割固定の解消が一つの大きな目的で、もう一つは「働きやすさ」も重要な視点でした。例えば、子どもの送迎や買い物にそのまま行けるなど、私生活との両立面でもメリットがあります。また、暑さ・寒さに服装で対応できるようになり、職場環境の改善にもつながります。
従業員と役員双方の認識差を分析したところ、やはり男女間の認識のズレや、役割固定解消の必要性が改めて明確になりました。女性だけでなく男性からも、制服によって役割が縛られているという意見が出てきたのです。
さらに深掘りするため、全従業員に服装選択自由化についてのアンケートをとりました。
「制服を廃止してほしい」「制服の着用を個人で選べるようにしてほしい」など制服着用義務の廃止を希望する意見が約7割に達しました。「女性だけスカートを着るのはおかしい」「どの年代も同じ服を着ることへの違和感がある」など、性別や年齢、個人の事情をもっと考慮してほしいという意見もありました。
一方で、「現状通り制服着用が良い」という意見も約3割あり、「統一感や平等が損なわれるのでは」「社外の人との区別が難しくなりそうでセキュリティ面が心配」など慎重な声も寄せられました。
制服着用に関して、今後のあり方として適切だと考えるもの
塩原:この結果を経営層に示したところ、従業員との認識の相違に驚いていましたが、結果として「トライアル(試行)」を行うことになりました。当社としては珍しい手法でしたが、「やってみないと分からない」と、スピード感を重視しました。
仕事にふさわしくない服装の人はいないか、社外の人との識別の問題など、事前にガイドラインを決め、ほぼ本番さながらでトライアルを実施したので、想像より心配は少なかったです。
——制服の着用が義務付けられている方たちへの説明や、不公平感などへの対応はどうされましたか?
長井:想定通り、「制服を着る人」と「着ない人」がいることへの公平性を問う声はありました。
業務の特性上、安全を担保するために制服の着用が必要な仕事もあります。しかし、働きやすさへの配慮は全員に必要です。そこで、暑熱対策として制服に「ポロシャツ」を追加するなど、実情に合わせた改善も行われました。なにより、「なぜ服装選択の自由化を行うのか」という目的を丁寧に説明し続けることを重視しました。
これまでの慣習に一石を投じ、対話とトライアルを経て始まった「服装選択自由化」。導入にあたっては公平性の担保や目的の浸透などハードルもありましたが、制度が動き出すと現場には予想以上の変化が生まれ始めました。