これを速く温められれば、点火時間が短縮できる。「ポットを薄く造ればいいのですが、燃焼システムの一部ですから耐久性が必要。また、薄いアルミ製品を造るには高度な加工技術が必要と、簡単にはいきませんでした。加工や制御の担当者と話し合いながら打開策を探りました。ずっと更新されていない理由が分かった気がしました」。
全体的に薄くできないなら、部分を攻めよう。現行ポットのどこをどれだけ削って薄くするかを考え、同時に、ポットを速く温めるためヒーター位置の変更にも取り掛かった。
「複雑形状×薄さ」という難題に金型が応える
「ポットの形状が変わると、それを作るための金型設計と加工条件設定はイチからのスタートとなるので、プロジェクトには構想段階から加わっていました」と、部品を手掛ける株式会社コロナテクノでダイカスト加工を担当した田畑は当時を振り返る。
このポットは、溶かした高温のアルミニウムを金型に流し込んで成形する「アルミダイカスト」という加工によって製造する。アルミダイカスト加工は精密で複雑な形状の部品製造は得意だが、複雑さ×薄さの二つが要求されると加工の難易度が上がる。今回は予熱時間短縮のために製品の肉厚が薄くなり、アルミニウム使用量が減るため、金型全体にアルミがいきわたる前に固まり始めるという問題が明らかになった。
更に、ヒーターの取り付け方の変更も問題として立ちはだかった。従来型とは異なり、新ポットではヒーターを器の底部に内蔵する設計に変わった。あらかじめ金型にヒーターをセットすることになるが、その作業には時間が掛かり、量産化に懸念が残る。
「解決したのはテクノロジーの力です。第一の問題にはコロナ製造本部の生産技術部門にも協力してもらい、解析ソフトでアルミが金型の中をどう流れるかシミュレーションしながら検証を重ね、最終的には、金型内部に真空状態を作り、アルミを隅々まで充填させる方法を導入しました。第二の問題は、ロボットによってヒーターの挿入を自動化しスピードアップを叶えました。これらの技術とダイカストマシンを組み合わせた製造は、コロナテクノでは初の試み。アルミの射出速度などの加工条件を何パターンも調整し、何度もトライを繰り返すなど、調整は簡単ではありませんでしたが、その分、量産がスムーズに始まった時の達成感はひとしおでした」と、田畑が笑顔を見せた。
今回の開発のキモはポット(気化筒)。新型(右)は従来型(左)よりぐっと軽量化されスリムに。