コロナ150秒V S競合メーカー40秒。それが石油ファンヒーターの点火時間におけるコロナと競合メーカーの時間差だった。
「すぐに暖まりたいお客様にとって110秒の違いは大きい。何とかならないだろうか」という要望がしばしば営業サイドから技術サイドへ上げられたが、「燃焼方式が違うため仕方がない」と考えられていた。
石油ファンヒーターでは灯油を熱して気体の状態にして点火するのだが、その方法はメーカーによって異なる。コロナが採用しているのは、予熱された気化筒(ポット)内に灯油を噴射して空気と混合させ、燃焼室(バーナ)へ送る「ポンプ噴霧(気化)式」。点火には時間がかかるが、燃焼中は消費電力が少なく省エネ性に優れている。
一方、他社が採用している「ブンゼン式」は、灯油を加熱して気化させバーナへ送るもので、点火までの時間は短いが、燃焼中も電力が必要で消費電力が多い。それぞれメリット・デメリットがある中、「電気代が一番安いファンヒーター」をコンセプトとするコロナは省エネ性に着目し、「ポンプ噴霧(気化)式」を採用していた。
「ポットの形状が変わると、それを作るための金型設計と加工条件設定はイチからのスタートとなるので、プロジェクトには構想段階から加わっていました」と、部品を手掛ける株式会社コロナテクノでダイカスト加工を担当した田畑は当時を振り返る。
このポットは、溶かした高温のアルミニウムを金型に流し込んで成形する「アルミダイカスト」という加工によって製造する。アルミダイカスト加工は精密で複雑な形状の部品製造は得意だが、複雑さ×薄さの二つが要求されると加工の難易度が上がる。今回は予熱時間短縮のために製品の肉厚が薄くなり、アルミニウム使用量が減るため、金型全体にアルミがいきわたる前に固まり始めるという問題が明らかになった。
更に、ヒーターの取り付け方の変更も問題として立ちはだかった。従来型とは異なり、新ポットではヒーターを器の底部に内蔵する設計に変わった。あらかじめ金型にヒーターをセットすることになるが、その作業には時間が掛かり、量産化に懸念が残る。
「解決したのはテクノロジーの力です。第一の問題にはコロナ製造本部の生産技術部門にも協力してもらい、解析ソフトでアルミが金型の中をどう流れるかシミュレーションしながら検証を重ね、最終的には、金型内部に真空状態を作り、アルミを隅々まで充填させる方法を導入しました。第二の問題は、ロボットによってヒーターの挿入を自動化しスピードアップを叶えました。これらの技術とダイカストマシンを組み合わせた製造は、コロナテクノでは初の試み。アルミの射出速度などの加工条件を何パターンも調整し、何度もトライを繰り返すなど、調整は簡単ではありませんでしたが、その分、量産がスムーズに始まった時の達成感はひとしおでした」と、田畑が笑顔を見せた。