新型ポットの形状が決定した後、霜鳥が開発に本格的に参加。霜鳥の担当は制御、つまり、石油ファンヒーターのスイッチを入れたら、それぞれの機能が順番に正しく作動して、部屋を快適に暖めるためのシステムを作ることだ。
ポットが軽量化されたことにより、従来型よりも早くポットの温度は上昇するようになったが、その周辺部品の温度がうまく上がらない。特に炎の形成に重要な役割を担うバーナヘッドという部品が十分温まっていないと、着火した時に白煙や臭いが発生してしまう。
「ポットを温めるためのヒーター、燃焼用空気を送るためのモーター、灯油を供給する電磁ポンプ、それらの動作を一から見直し、点火制御を新型ポットに合わせ改良しました」。
2016年モデルは新型ポットと改良された制御によって、150秒だった着火時間を75秒に短縮することに成功。「大きな一歩でしたが、まだ私たちは納得していませんでした。目標は60秒を切ることでした」と渡邉。更なる挑戦が始まった。
さらなる点火時間短縮、「55秒」へ
燃焼には灯油に対し、適切な空気量が必要で、空気の割合が少ないと着火しやすいのだが、そのままでは炎がめらめらと燃え上がり煤(すす)が発生してしまう。75秒から更に点火時間を短縮させるには、この灯油量と空気量のバランス調整が困難を極めた。
「この課題を解決するために、点火動作時のバーナ部の温度や、灯油量と空気量の比率をこれまで以上に細かく制御するシステムを構築しました」。
しかし、思わぬ問題が発生する。
「点火時間の短縮により点火時のバーナ部の温度が微妙に変化。その僅かな違いにより、正常に燃焼しているかを判定する炎検知システムに悪影響を与えることが分かりました。様々なシチュエーションで試験を重ね、炎検知システムの再設定を行いました」。
コロナ石油ファンヒーターのバーナ構造図。(イラストはイメージ)
燃焼の制御動作をひとつずつ見直し、改良を重ね、2020年モデルでは、ついに55秒点火を実現した。「この55秒は制御で実現できたもの。開発者として達成感がありました」。
55秒点火を実現したFH-WZ3620BY(当時)
「ただ、これで終わりではないと思っています」と霜鳥は言う。「確かに60秒を切って競合メーカーと対抗できるようになりましたが、業界最速には届いていません。超える壁はまだあります」。
渡邉も話す。「開発には、人が気づかない、いわゆる目に見えないものも多いのですが、今回は違いました。コロナのファンヒーターの弱点とされてきた部分を飛躍的に改善し、数字という目に見える形で表せた。ずっとできなかったことを実現できたのですから、携わった全員が大きなやりがいを感じられたと思います。点火時間55秒を明示できるようになって、営業からも『これまでは、コロナは点火に時間が掛かるが、電気代が安いと言っていたけれど、今は、前置きなしに長所をアピールできる。おすすめしやすくなった』『手ごたえを感じている』という声が聞こえてきてうれしい限りです。こういうエンジニアとしての喜びも若い人たちに伝えていきたいと思います」。
設計・加工・制御の各部門のエンジニアたちが知識や経験を共有し、連携を図って実現した点火時間の短縮。より良いものを作るという先人達の思いを繋ぎ、画期的な改善を成し遂げた。
その姿勢とノウハウが、今、リレーされようとしている。バトンを受け取るのは、若いエンジニアたちだ。
※記事の内容は開発当時のものです。商品の改良や組織変更などにより最新の情報と異なる場合がありますので、ご了承ください。