こだわりのデザインと並行する形で進められたのが、設計だ。設計と試験評価全般を担当した旅河は、「今回のプロジェクトのメンバーは、アウトドア好きが多いのですが、私は全くの門外漢。そのためアウトドア好きが求める機能や形状などについて、他のメンバーに教えてもらいながら取り組みました」
SZ-F32の機能としては、1泊のキャンプを想定して、燃焼時間を約12時間に設定。持ち運びが軽いよう、タンク容量は3.8リットルとした。燃料タンクが小さくとも、暖かさを維持できるストーブとして、その性能を左右する重要部品が「燃焼筒」だ。
「燃焼筒には無数のパンチング(穴)がありますが、その一つ一つに役割があり、例えば酸素を通す・火を通す・空気の流れを整える・余分なガスを燃やすなど、緻密な研究の結果から開けられているんです。石油ストーブのなかでは最重要部品と言ってもいいでしょうね。パンチングの数や位置によって、そうした機能も変化してくるため、これらを調整するのに最も時間がかかりました。日数にして約1年間、パンチングの調整は百回を超えました。」
パンチングの一つ一つを検証しながら、「この穴はそういうことか!など、自然対流形石油ストーブを作った先輩技術者たちのすごさも改めて感じることが多かった」と旅河。
デザインと設計が固まった後は、実際の製造段階となる。「製造に関しては、ゼロベースからラインを立ち上げるのではなく、既存の設備をうまく活用し、けれどそれで全てがカバーできるわけでもない。SZ-F32専用の特別な治具を自分たち社内で作って対応しました」と、製造課の石塚は話す。普段はストーブや給湯機の製造工程における溶接を手がけ、今回のプロジェクトでは、その溶接の部分で、特別な加工が求められた。
「そのうちの一つが、ストーブ本体を載せる置き台のボルト部分です。普通は置き台に穴を開けてボルトを通し、本体と結合させるのですが、それだと置き台にこぼれた灯油が下部から漏れる可能性があります。テントという狭い空間で使うためにそれは絶対に防ぐ。そのためにボルトを直接置き台につける『スタッドボルト溶接』を採用しました。」
「灯油を入れるタンクと、本体部の溶接も容易ではありませんでした。灯油漏れがしないようにきっちりと溶接をする必要があったのですが、その際にはタンクと本体をしっかり固定しなければならず、そこにはとても苦労しました。」
タンクと本体部、それぞれをうまく固定することができなければ、溶接部にズレが生じて安全性にも影響する。そこで石塚は、製造スタッフとともに固定用の特別な治具を作り出し、安定加工につなげた。
以上のようなプロセスを経て誕生したSZ-F32がリリースされたのは2023年4月。まずコロナの公式オンラインストアで限定発売したところ、ユーザーには好評を持って迎えられ、予定販売台数もすぐにクリア。プロジェクトのメンバーは確かな手応えを感じ取った。
「プロジェクトのスタート当初は、アウトドア製品の開発に対して危惧する声もあるにはありました。でも新しいことを始める際に反対はあって当然なんです。その声にも耳を傾けながら開発した今回のプロジェクトでは、一定の成果を出せたので、今後を期待する声が多くなったと感じています」とメンバーの一人は振り返る。
デザイン担当の佐藤は「自分が生まれる前からある製品の系譜を継ぐ新製品の開発に関わることができたのは、貴重な経験でした。新しいことに常にチャレンジする先輩の存在が僕らを成長させてくれます。SZ-F32はいまのデザインで満足しているわけではなく、今後もバージョンアップしていければと思っています。できればOUTFIELDブランドの製品の新しいシリーズも手がけていきたい」と話す。
設計と試験評価を担当した旅河は「今回の製品は対流形ストーブとして34年ぶりの新製品ということで、個人的にはコロナの歴史に関わったような気持ちでいます。ものづくりの面白さを改めて感じさせてもらいました」と語ってくれた。
製造に携わった石塚は「溶接の新しい技術に挑戦できたことは楽しかったです。会社の新しいチャレンジを技術で支えることができた。また、新しい製品も手がけていきたいですね」と笑顔を見せた。
アウトドア事業への挑戦はまだ始まったばかり。今後もさまざまなプロジェクトが立ち上がっていく予定だ。新たなフィールドにおいて、コロナのものづくりは多彩なシーンを描き出していく。
※記事の内容は開発当時のものです。商品の改良や組織変更などにより最新の情報と異なる場合がありますので、ご了承ください。