遠赤外線量を画期的に増やすためには、ストーブの下部に設置されたバーナーから出る熱を、より効率よくストーブ前面に伝える新しい技術が必要だった。開発のキモはここに絞られ、このタイミングで松本が設計担当として開発チームに加わった。
「下から上がってくる燃焼ガスは、角のない斜めのラインに沿わせるとスムーズに流れる」「直線より曲線の方が効率的だ」など、試行錯誤を経てたどり着いたのは、ドーム型の空間。名付けて『遠赤外線ドーム』。そのカタチが定まったとき、開発から2年が経とうとしていた。
「発売予定まであと1年。この限られた時間で、従来モデルとは全く異なる設計を形にし、製品の品質を向上させていくには、乗り超えなくてはならない課題が山のようにありました。」
まず、遠赤外線ドームについては、単純な半円形ではなく、熱効率を高められる独特の形に、また、大型バーナーの熱量を受け止められるだけの大きなサイズにして、目指す遠赤外線放射量を達成。一方、ストーブの底面や背面、機内については、安全に使用できるようにJIS規格以上に厳しい社内規格をクリアすべく、温度を低減させなければならない。熱を遮り、風の流れを司る遮熱板についても調整を繰り返した。
赤佐には遠赤外線ドーム搭載に伴って極端に狭くなったスペースとの格闘が待っていた。「本体サイズは変わらないのに、大きな遠赤外線ドームが搭載されたのです。ストーブに必要な安全装置をはじめとする部品、床暖房が併用できるモデルでは、そのための装置をどのように収めるかを考えなければなりませんでした。性能を満足させつつ、組み立てやメンテナンスのしやすいレイアウトや部品形状を決めていくのは簡単なことではありませんでした。」
やがて赤佐と松本が進めてきた設計は固まり、開発は次の段階へ。「設計段階では金属素材をつぎはぎにしてドームの形を作っていましたが、実際の製造では1枚の金属板で成形するわけですから、本当にできるのかという気持ちがありました」と、赤佐。その言葉通り、正念場は続いた。